インドには、現代まで生き続ける 迷信(superstition) が驚くほど多く存在します。
それは食べ物・健康・家のしきたり・身体の使い方など、生活のあらゆる場面に浸透し、“迷信”というより 文化的ルール として扱われているものも少なくありません。
「どうして今も信じられているの?」
「宗教だけが理由なの?」
実際には、宗教的象徴・衛生観・自然環境・家族制度・歴史的経験 が複雑に絡み合って形成された“生活の知恵”です。
この記事では、インドの迷信20選を、単なる紹介ではなく“理由つき”で徹底解説 します。
- インドの迷信が形成された“歴史的背景”
- インドの迷信20選(文化背景つき)
- ① 夜に爪を切ると不運が訪れる
- ② 夜に髪を洗うと悪霊が寄る
- ③ 左手で食べると不浄がつく
- ④ 家の前を牛が横切ると吉兆
- ⑤ くしゃみを一度すると縁起がよい
- ⑥ 左足から家に入ると不運
- ⑦ 呼ばれて振り返らないと悪霊を避けられる
- ⑧ 夜に水を汲むと霊を呼ぶ
- ⑨ つむじが2つあると強運 or 気が強い
- ⑩ 夜に口笛を吹くと蛇を呼ぶ
- ⑪ 新しい靴をベッドに置くと不浄
- ⑫ 出産直後の女性は清め期間が必要
- ⑬ 黒猫が横切ると不吉
- ⑭ 右の目がぴくっとすると吉兆
- ⑮ 食べ物を足で触ると不運
- ⑯ 誰かがくしゃみをすると外出を避ける
- ⑰ 家の入口に赤い粉(クムクム)を置くと魔除け
- ⑱ 結婚式前にアロエを食べるのは禁止
- ⑲ 子供の頬に黒い点を描くと邪気避け
- ⑳ 料理を誰が作ったかが非常に重要
- 他国との比較でわかるインドの迷信文化
- まとめ
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インドの迷信が形成された“歴史的背景”
神話と宗教が日常行為を神聖化した
インドの迷信の根幹は ヒンドゥー神話。
神が好む行為・嫌う行為が、日常の細かなルールとして根付いた。
- 行為には“吉兆・不吉”の概念
- 神々の物語が個人の生活を規定
- 宗教行為と日常の線引きが曖昧
結果として、宗教と日常が一体化し、迷信へと転化していった。
高温多湿の気候と衛生観念が迷信を強化
インドは衛生リスクが高い地域だったため、危険回避のための生活知 が迷信として残った。
例:
- 「夜の水を飲むな」→ 汚染水の回避
- 「左手は不浄」→ トイレ用の手を避ける衛生行動
- 「夜の爪切り禁止」→ 暗さによる怪我防止
迷信には、ほぼ必ず“現実的な理由”があった。
カースト文化の“清浄・不浄”概念
インドの身分制度では、食・身体・水・接触 に清浄/不浄のランクがついていた。
- 誰が調理したか
- 誰と食べるか
- 何を共有するか
これらの価値観は迷信を通じて現在も影響している。
交易文化による多宗教の融合
インドは交易大国で、ヒンドゥー、イスラム、仏教、民間信仰が混ざり合った。
その結果…
- 吉兆・不吉の基準が複数共存
- 動物・色・身体部位に異なる象徴性が付く
- 他国より圧倒的に迷信の種類が多い
多文化国家ならではの“複層的迷信”が形成された。
インドの迷信20選(文化背景つき)
① 夜に爪を切ると不運が訪れる
理由:
- 暗闇で怪我しやすい
- 衛生的に不潔だった
- 夜の刃物は“悪霊を呼ぶ”という世界観
② 夜に髪を洗うと悪霊が寄る
理由:
- 体温低下 → 病気の原因と信じられた
- 髪は“生命力の象徴”で夜に濡らすのは不吉
③ 左手で食べると不浄がつく
理由:
- 左手=排泄関連の象徴
- 清浄/不浄の宗教観に基づく
- 食卓を“浄域”とする文化
④ 家の前を牛が横切ると吉兆
理由:
- 牛=繁栄・富・慈悲の象徴
- ラクシュミー女神と結びつけられる
- 農耕社会での幸運の兆し
⑤ くしゃみを一度すると縁起がよい
理由:
- アーユルヴェーダでは“浄化のサイン”
- 邪気が体から抜けると考えられた
⑥ 左足から家に入ると不運
理由:
- 左=不浄の象徴
- “右から入る=吉兆”という儀礼感覚
⑦ 呼ばれて振り返らないと悪霊を避けられる
理由:
- 霊が背中から入るという古代の身体観
- 夜道で振り返ると危険 → 行動規範に転化
⑧ 夜に水を汲むと霊を呼ぶ
理由:
- 夜の水=最も汚染リスクが高かった
- “闇=霊”という象徴体系の影響
⑨ つむじが2つあると強運 or 気が強い
理由:
- 身体的特徴に意味を持たせる民間占い
- “特別な子”への期待値の反映
⑩ 夜に口笛を吹くと蛇を呼ぶ
理由:
- 砂漠地帯では“音=危険信号”
- 口笛の高音と蛇の警戒音が結びついた
⑪ 新しい靴をベッドに置くと不浄
理由:
- 靴=不浄
- ベッド=清浄
- 清浄/不浄の境界を守るための規範
⑫ 出産直後の女性は清め期間が必要
理由:
- 出産=神聖だが“血=不浄”の観念
- 体力回復のため隔離する文化的合理性もある
⑬ 黒猫が横切ると不吉
理由:
- イスラム文化での象徴が影響
- “黒=悪”という色象徴が重なる
⑭ 右の目がぴくっとすると吉兆
理由:
- 身体反応に“神意”が宿ると考える伝統
- 占い文化の名残
⑮ 食べ物を足で触ると不運
理由:
- 足は不浄
- 食べ物は神への供物でもある
- 暴 disrespect と受け取られる
⑯ 誰かがくしゃみをすると外出を避ける
理由:
- “悪い予兆”の象徴
- 実際は体調不良者を避ける合理性も
⑰ 家の入口に赤い粉(クムクム)を置くと魔除け
理由:
- 赤=生命力・繁栄
- シヴァ神・女神信仰に結びつく護符文化
⑱ 結婚式前にアロエを食べるのは禁止
理由:
- アロエの苦味=不吉
- 婚礼は“甘い吉兆”を求める文化と逆
⑲ 子供の頬に黒い点を描くと邪気避け
理由:
- 美しい子ほど“邪気に狙われる”信仰
- 美貌に対する防御儀礼
⑳ 料理を誰が作ったかが非常に重要
理由:
- カースト文化で食べ物=清浄性の象徴
- 調理者の身分・純粋性が重視された名残
他国との比較でわかるインドの迷信文化
● 日本:自然・季節と結びつく迷信
→ 「季節の変化」を基盤とした生活知。
● 中国:陰陽・風水が中心
→ 哲学体系が迷信の母体。
● インド:宗教 × 身体 × 衛生 × 社会制度
→ 世界でも最も“多層構造”の迷信文化。
まとめ
- インドの迷信は宗教・衛生・社会制度・自然環境から形成された“合理性のある伝承”。
- 多くの迷信は生活を守るための知恵として発達。
- 現代も文化の象徴として強く残り続けている。
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