インドを訪れた人がまず驚くのが、寺院の極彩色。青・赤・黄・緑……
まるで絵画のような鮮やかさは、単なる美的感覚ではなく、神々の象徴体系・自然観・社会構造と密接に結びついている。
本記事では「なぜインドの寺院はこれほどカラフルなのか?」を、ヒンドゥー教の宇宙観と地域文化の歴史をもとに徹底解説する。
寺院がカラフルになった歴史的背景
気候と自然環境が彩色文化を育んだ
インドは強い日差し・乾燥・高温多湿が共存する国。
強烈な光の下では、淡い色よりも「鮮やかな色がもっとも視認性が高い」。
そのため、神像・寺院建築・壁画において、濃い色彩文化が発達した。
また自然界そのものが極彩色(花・果実・サリー・祭りの色粉)であり、「色は生命力」という共通認識を強めた。
交易と芸術の交流
南インドや西インドは交易都市が多く、宝石・染料・顔料の文化が早くから発達した。
特にドラヴィダ寺院(南インド)のゴープラムは、
- 海上交易で得た鉱物顔料
- 地域職人の彫刻技術
が合わさり、カラフルな巨大塔として進化した。
神々の多様性が“色の体系”を生み出す
ヒンドゥー教は多神教であり、神々にはそれぞれ象徴色がある。
寺院が色鮮やかであることは、「多様な神々が共存する宇宙」を視覚的に表現する手段となった。
寺院を彩る“色”の特徴(神々の象徴と意味)
青(ヴィシュヌ・クリシュナ)
青は
- 無限
- 天空
- 宇宙の広がり
を示す。
クリシュナやラーマなど、ヴィシュヌ神系が青色で描かれるのは、「世界を包む力」や“冷静な精神性”を象徴するため。
赤(シャクティ・ドゥルガー)
赤は
- 生命力
- 力(シャクティ)
- 繁栄
を表す。
女性神や戦いの神が赤で飾られるのは、生み出す力と破壊する力の両義性 を象徴するため。
黄・金(ラクシュミー)
黄や金は
- 富
- 収穫
- 光
を示し、幸運の女神ラクシュミーの色とされる。
寺院の金色装飾は、神の祝福と繁栄を祈る意味が込められる。
緑(自然・豊穣)
緑は自然の再生や農耕を象徴する。
農業国家インドでは“緑=生命の循環”という価値観が強く、神像や壁画の背景に頻繁に使われる。
白(清浄・真実)
白は
- 清浄
- 真理
- 平和
を象徴する。
シヴァ神の衣や祭具に白が多いのは、禁欲・精神性・浄化 という概念と結びつくため。
色彩が生活習慣・タブーに与える影響
マナーや衣服に反映される理由
インドでは
- 結婚式は赤
- 喪服は白
- 宗教儀式は黄
など、色と感情・儀礼の関係が非常に強い。
寺院の色彩体系は、「色が意味を持つ社会」を育て、日常の選択(衣服・贈り物・飾り付け)に影響を与えている。
色のタブー
- 黒:不吉・破壊の象徴
- 白:死を連想(北インド)
など、寺院文化と直結するタブーが存在する。
色彩は単なるファッションではなく、「行為の吉凶を示すコード」として機能する。
祝祭文化(ホーリー・ディワリ)との関係
色粉を投げ合う「ホーリー祭」は、神々の色彩体系が民俗化したもの。
ディワリの装飾も、金・黄・赤など“吉兆の色”でまとめられる。
他国との比較でわかるインド寺院の特徴
周辺国との違い
タイやカンボジアの寺院も華やかだが、インド南部の寺院ほど“極彩色の密度”は高くない。
インドでは色彩そのものが神性の表現方法として発達した点が特徴。
同じヒンドゥー文化でも違いが生まれる理由
南インドはドラヴィダ文化・彫刻技術・交易が強く、北インドはムガル文化(イスラム建築)の影響を受け白・赤が多い。
気候・歴史・美術技術の差によって、寺院の色彩が地域ごとに異なる。
まとめ
- インドの寺院がカラフルなのは、自然環境・交易・多神教の象徴体系が融合した結果。
- 色は神々の力を視覚化する重要な宗教表現。
- 色彩文化は日常のマナー・タブー・祝い事にも深く影響している。
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