日本では、麺をすする音は必ずしもマナー違反とはされない。
しかし ベトナム では、食事中に音を立てる行為はあまり好まれない。
フォーや麺料理が中心でありながら、なぜベトナムでは静かに食べることが重視されるのだろうか。
それは単なる作法ではなく、人との距離感や公共意識に根ざした文化である。
食事は「個人の行為」ではない
周囲との調和が優先される
ベトナムでは、食事は自分一人の時間ではなく、周囲と空間を共有する行為と考えられている。
音を立てることは、周囲の集中や快適さを乱す行為と受け取られやすい。
目立たないことが美徳
必要以上に存在感を出さない。
これは、ベトナム社会に広く共有される感覚だ。
儒教的価値観の影響
「慎み」が評価される文化
ベトナムは、仏教だけでなく儒教の影響も強く受けてきた社会である。
儒教では、
- 節度
- 礼儀
- 控えめな振る舞い
が重視される。
食べ方も人格の一部
音を立てずに食べることは、育ちや教養を示す振る舞いと考えられてきた。
静かな食事が「上品」とされる
美味しさは態度で示さない
日本では、音を立てることで美味しさを表現する場合もある。
しかしベトナムでは、美味しさは表情や会話で共有するものであり、音で主張するものではない。
音=無遠慮という感覚
食べる音は、意図せずとも無遠慮に聞こえてしまう。
それを避けることが、上品さにつながる。
麺文化があっても「すする必要がない」
麺が短く切られている
ベトナムの米麺は、日本の麺ほど長くない。
そのため、強くすすらなくても自然に口に運べる。
スープの温度も比較的穏やか
熱々すぎないスープが多く、音を立てずに食べやすい構造になっている。
公共空間での食事が多い社会
屋台や食堂は共有空間
ベトナムでは、屋台や大衆食堂など、人が密集する場所で食事をする機会が多い。
音が響きやすい環境
だからこそ、個人の音が目立たないよう配慮する感覚が育った。
「正解を主張しない」文化
食べ方に個性を出さない
ベトナムの食文化では、自分のやり方を周囲に押し出す必要はない。
静かに食べることは、その場に溶け込むための手段でもある。
なぜ音を立てないのか(まとめ)
ベトナムで音を立てて食べない理由は、
- 周囲との調和を重視する社会意識
- 儒教的な慎みの価値観
- 上品さを示す振る舞い
- 麺やスープの構造上の理由
- 公共空間での食事が多い環境
- 目立たないことを良しとする文化
といった要素が重なった結果である。
ベトナムの食事マナーは、「美味しさ」より「空間」を大切にする姿勢を映し出している。
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