タイの食事では、料理を一人ずつ注文して食べるよりも、複数の料理を頼み、全員でシェアするのが一般的だ。
これはレストランでも家庭でも同じで、「自分の料理」という概念は比較的弱い。
なぜタイでは個食ではなく、シェアする食べ方が定着したのだろうか。
その背景には、家族観・社会構造・宗教的価値観が深く関係している。
食事は「個人の時間」ではなく「場の時間」
食事は人と人をつなぐ行為
タイでは、食事は空腹を満たすだけの行為ではない。
家族や仲間と同じ時間を過ごすためのものと考えられている。
個食より共有が自然だった
一人一皿ずつ食べる形式は、食事を個人単位に分断してしまう。
料理を共有することで、場としての一体感が生まれる。
家族中心社会がシェア文化を育てた
大家族・親族単位の生活
伝統的なタイ社会では、複数世代が同居する大家族が一般的だった。
料理は「みんなのもの」
食卓に並ぶ料理は、誰か一人のものではなく、家族全体のものとして扱われた。
この感覚が、現在のシェア文化にも受け継がれている。
円卓・中央配置が前提の食卓構造
料理は中央に置かれる
タイの食卓では、料理をテーブル中央に置くのが基本である。
取り分ける動作が自然に生まれる
中央に料理があれば、自然と分け合う動作が生まれる。
この構造そのものが、シェアを前提としている。
仏教的価値観と「分かち合い」
独占を良しとしない思想
タイの仏教文化では、欲を抑え、分かち合うことが重視される。
食べ物を独り占めしない感覚
料理を独占する行為は、無意識のうちに好ましくないと感じられる。
シェアは、宗教的価値観とも整合性のある行為だった。
好みや体調の違いに対応できる
料理を選べる自由
複数の料理をシェアすれば、辛いものが苦手な人、軽く食べたい人も対応できる。
無理に同じものを食べなくていい
全員が同じ一皿を食べる必要がないため、食事が柔軟になる。
この実用性も、シェア文化が続いた理由の一つである。
なぜシェア文化が定着したのか(まとめ)
タイで料理をシェアして食べる理由は、
- 食事を「場」として捉える価値観
- 大家族・親族中心の社会構造
- 中央配置・円卓型の食卓
- 仏教的な分かち合いの思想
- 好みや体調の違いに対応できる合理性
といった要素が重なった結果である。
タイ料理は、料理そのものだけでなく、分け合う行為を含めて完成する文化なのである。
