ベトナム料理といえば、皿いっぱいに盛られた香草(ハーブ)が印象的だ。
フォーに山盛りの葉物、ブンや生春巻きに添えられる大量の香草。
初めて見る人は、
「なぜこんなに入れるのか?」
と疑問に思うかもしれない。
なぜベトナムでは、これほど香草を多用する食文化が発達したのだろうか。
香草は「味付け」ではなく「構成要素」
脇役ではなく主役の一部
ベトナム料理において香草は、飾りや添え物ではない。
料理の完成には、香草を加えることが前提となっている。
香草がないと料理が未完成
フォーやブンは、香草を入れて初めて味と香りのバランスが整う。
つまり香草は、調味料と同じレベルの存在なのだ。
暑さが香草文化を育てた
油や塩に頼れない気候
高温多湿なベトナムでは、油や強い塩味は体に負担になりやすい。
そこで代わりに使われたのが、香りで食欲を刺激する香草だった。
食欲を呼び覚ます役割
暑さで食欲が落ちやすい環境では、香りの強いハーブが食事を助ける。
ミント、パクチー、バジルなどの清涼感は、暑い中でも食べやすさを保つ。
薬膳的発想が根付いている
食事=体調管理という考え方
ベトナムでは、食べ物は単なる嗜好品ではなく、身体を整えるものと考えられてきた。
香草には役割がある
多くの香草は、
- 体を冷やす
- 消化を助ける
- 匂いを中和する
といった役割を持つとされる。
料理に香草を加えるのは、味だけでなく体調への配慮でもある。
生で食べられる環境があった
新鮮な野菜が手に入りやすい
ベトナムは農業国で、新鮮な葉物野菜や香草が身近にあった。
加熱しない文化が成立した
新鮮だからこそ、生で大量に食べることが可能だった。
これが、香草を「大量に使う」文化につながった。
香草が油の代わりをしている
コクを油以外で補う
ベトナム料理は油を控えめにする代わりに、香草の香りで満足感を出している。
軽いのに物足りなくならない理由
香草が入ることで、あっさりした料理でも味に奥行きが生まれる。
油に頼らない料理設計が、香草多用と結びついている。
「選べる」ことも前提の文化
香草は強制ではない
特徴的なのは、香草を入れる量を食べ手が調整できる点だ。
苦手な人は減らし、好きな人は山盛りにする。
押しつけない食文化
正解を一つに決めない。
これもベトナム料理の特徴であり、香草文化を支えている。
なぜ香草を大量に使うのか(まとめ)
ベトナム料理で香草が多用される理由は、
- 香草が料理の構成要素である
- 暑さへの適応として香りが重視された
- 薬膳的な体調管理の発想
- 新鮮な香草が手に入りやすい農業環境
- 油に頼らない味づくり
- 食べ手が選べる柔軟な文化
といった要素が重なった結果である。
ベトナム料理の香草は、個性ではなく合理性の結晶なのである。
