タイのレストランや屋台では、料理が運ばれてくると同時に、ナンプラー、唐辛子、砂糖、酢などの調味料が卓上に置かれる。
多くの人が、料理を一口食べる前から調味料を足す。
日本人にとっては
「最初から完成させて出せばいいのでは?」
と疑問に思う光景だろう。
しかしタイでは、味は食べる人が仕上げるものという考え方が当たり前だ。
ここでは、なぜタイ料理が「味を足して完成」する文化を持つのかを解説する。
味の正解は一つではない
人によって好みが大きく違う
タイ料理は辛さ・酸味・甘味がはっきりしているため、好みの差が非常に大きい。
辛さが苦手な人もいれば、強烈な刺激を好む人もいる。
最初から決め打ちしない設計
料理を最初から完成形にすると、誰かにとっては「合わない味」になる。
そこでタイ料理では、ベースだけを作り、仕上げは各自に任せるという発想が生まれた。
シェア文化と卓上調味料の相性
同じ料理を皆で食べる前提
タイでは、料理はシェアして食べるのが基本だ。
同じ皿を複数人でつつくことも多い。
個別に味を調整できる必要があった
一皿の味を固定してしまうと、全員の好みに合わせることができない。
卓上調味料があれば、各自が自分の皿の上で味を完成させられる。
屋台文化が「後味調整」を定着させた
大量調理では微調整が難しい
屋台では、一度に多くの料理を作る。
一皿ごとに味を完璧に調整するのは現実的ではない。
調味料で仕上げる方が効率的
ベースを一定に保ち、細かな好みは客に任せる方が合理的だった。
この方式が、屋台文化と共に定着していった。
味を足す行為は「失礼」ではない
作り手への否定ではない
日本では、料理に調味料を足す行為が「失礼」と受け取られることがある。
しかしタイでは、味を足すことは当たり前であり、作り手を否定する意味はない。
「自分好みに仕上げる」のが礼儀
むしろ、何も足さずに食べる方が「遠慮している」「慣れていない」と思われることもある。
仏教的価値観と柔軟な完成形
完璧を求めすぎない思想
タイの仏教文化では、物事を固定せず、柔軟に受け止める姿勢が重視される。
味も流動的なものとして扱う
料理の味も、一つの完成形に縛られるものではない。
食べる人の状態や気分によって変わってよい、という考え方が、卓上調味料文化と親和性を持っていた。
なぜ「味を足して完成」なのか(まとめ)
タイ料理が「味を足して完成」する理由は、
- 味の好みが人によって大きく違う
- シェア文化との相性
- 屋台文化に適した効率性
- 調味行為が失礼に当たらない価値観
- 仏教的な柔軟性の思想
といった要素が重なった結果である。
タイ料理では、料理は出された時点で未完成。
食べる人が関わって初めて完成する。
この考え方こそが、タイの食文化を理解する重要な鍵なのである。
