タイ料理を食べていると、辛い料理や酸味の強い料理にも、はっきりとした甘味が感じられることに気づく。
「なぜこんな料理に砂糖を入れるのか?」
日本の味覚に慣れていると、不思議に思う人も多いだろう。
しかしタイ料理における甘味は、単なる嗜好ではなく、料理を成立させるための重要な要素である。
本記事では、なぜタイ料理に砂糖が欠かせないのかを、気候・生活・味覚思想・宗教観から順に解説する。
甘味が必要とされた最大の理由は「刺激の調整」
辛さと酸味を受け止める役割
タイ料理は、辛さや酸味といった強い刺激を多用する。
これらをそのまま組み合わせると、味は攻撃的になりやすい。
甘味は、
- 辛さを和らげる
- 酸味の角を取る
- 全体を丸くまとめる
という役割を持つ。
砂糖は、刺激を調和に変えるための装置だった。
子どもから高齢者まで食べられる味
甘味を加えることで、辛さや酸味が苦手な人でも料理を受け入れやすくなる。
家族単位・共同体単位で食事をする文化において、誰でも食べられる味に調整することは重要だった。
屋台文化が「砂糖入り」を定着させた
短時間調理でも味を決めやすい
屋台では、一皿ごとに長時間調理する余裕はない。
砂糖は、少量で味の輪郭をはっきりさせることができる。
そのため屋台料理では、砂糖が即効性のある調味料として重宝された。
冷めても味が崩れにくい
甘味は、冷めたときに味の印象を支える。
油や塩味だけの料理よりも、時間が経っても満足感が残りやすい。
この特性は、持ち帰りや立ち食いが前提の屋台料理と相性が良かった。
タイの甘味は「デザート的甘さ」ではない
甘味は主張せず、支える存在
タイ料理の甘味は、日本の煮物やデザートの甘さとは性質が異なる。
前面に出るのではなく、他の味を支えるために存在する甘味である。
砂糖は「味の調整弁」
砂糖は、味を甘くするためだけのものではない。
辛さ・酸味・塩味のバランスを整える調整弁のような役割を担っている。
気候とエネルギー補給の関係
暑さによる消耗を補う
高温多湿の環境では、体力の消耗が激しく、エネルギー不足に陥りやすい。
砂糖は、即効性のあるエネルギー源として機能した。
甘味は「生きるための味」
甘味は、単なる嗜好ではなく、生活を支える味覚でもあった。
そのため、日常料理にも自然に組み込まれていった。
宗教観と「極端を避ける味覚」
仏教における中庸の思想
タイの仏教文化では、極端な快楽や刺激を避ける「中庸」が重視される。
甘味は刺激を鎮める役割を持つ
甘味は、辛さや酸味といった強い刺激を抑え、全体を穏やかに整える。
この点で、砂糖は 仏教的価値観とも親和性の高い調味料だった。
なぜタイ料理には砂糖が入るのか(まとめ)
タイ料理に砂糖が使われる理由は、次の要素が重なった結果である。
- 辛さ・酸味を調整するため
- 屋台文化に適した即効性
- 冷めても味を保つ性質
- 暑さによるエネルギー補給
- 仏教的な調和の思想
タイ料理の甘味は、「甘くするため」ではなく「味を成立させるため」に存在している。
