インドでは白い服は「純粋」「神聖」を意味する一方、日常では“不吉”と捉えられる場面が多い。
特に結婚式や祝い事で白を避ける習慣は、旅行者が最も誤解しやすい文化の一つだ。
本記事では、なぜ白が“不吉”として扱われるのか、ヒンドゥー教の象徴体系・歴史・女性の地位・儀礼文化をもとに深く解説する。
白が“不吉”とされる歴史的背景
気候・自然環境が白の“死との結びつき”を強めた
インドの高温気候では、亡骸はすぐに火葬される必要があった。
その際に巻かれる白布は、
- 腐敗を隠す
- 儀礼を簡素に表す
用途があった。
この実用的な習慣が、「白=死の象徴」として文化に根づいた。
ヒンドゥー教の“清浄と死の二面性”
ヒンドゥー教では、白は
- 真理
- 精神性
- 禁欲
を象徴する。
しかし、死は“魂が肉体を離れる清浄の過程”と考えられ、喪服として白を着るようになった。
つまり、「最も清浄=死に近い」という思想が白の不吉さを生んだ。
女性の「白いサリー」の歴史
かつてのインドでは、未亡人は白いサリーを着るのが一般的だった。
これは
- 性的な魅力を抑える
- 禁欲を示す
- 家族の不幸を可視化する
ための慣習だった。
白=不幸の象徴
というイメージが社会に強く残った。
インド文化における“白の特徴”(象徴性・使用場面・心理)
白は“儀礼の色”であり、日常の祝福には不向き
白は聖職者や宗教儀礼には使われるが、結婚式・誕生日・宗教祭では好まれない。
これは、白が 精神世界に近い=現世的な祝福と距離がある とみなされるため。
白は“欠乏・無”を象徴する
インドの色彩体系では、
赤=繁栄
黄=吉兆
緑=再生
といった“生命的な色”が重視される。
その対極にある白は、
- 彩りのなさ
- 欲望の放棄
- 世俗からの隔離
を象徴し、不吉として扱われる場面が生まれる。
白は“境界の色”
白は純粋であるがゆえに、
- 生と死
- 現世と霊界
- 個人と宇宙
をつなぐ境界線とされた。
境界は危険でもあるため、「祝い事では避けるべき色」とされた。
白が生むマナー・タブーの背景
祝い事で白を避ける理由
結婚式で白を避けるのは、
- 死を連想
- 未亡人の象徴
- 繁栄(赤)の対極
とされるため。
誕生日・新年・宗教祭でも、白は“エネルギーが弱い色”として忌避される。
葬儀では白が絶対的なルール
インドの葬儀では、
- 喪主
- 家族
- 参列者
全員が白を着用するのが一般的。
白は「魂を送る清浄の色」としての役割を持つ。
日常でも白が避けられる状況
- 受験
- 商談
- 新しい計画
など、運気を必要とする場面では白が避けられる。
白は“力を持たない色”として扱われるためである。
他国との比較でわかる“白の不吉性”
周辺国との違い
中国・日本でも白が死と結びつくが、インドでは宗教的象徴が非常に強いため、喪の色=白が絶対的に固定されている。
同じヒンドゥー文化でも地域差
- 南インド:白は儀礼の色として広く使用、祝祭でも中和的立場
- 北インド:白=喪のイメージが強く、祝い事では厳格に避ける
地域文化と婚姻制度によって差が生まれた。
まとめ
- 白は“清浄と死”の象徴であり、祝い事との相性が悪い。
- 未亡人の衣服文化が白の“不吉”イメージを社会化した。
- 地域差はあるものの、白を避ける習慣は現代も根強く続く。
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