インド人の額に描かれた赤い点は、単なる装飾ではない。
宗教、結婚、精神性、社会的立場までを表す重要なシンボルである。
この「ビンディ」は、なぜ額に描かれ、なぜ赤い色が多いのか。
女性だけのものなのか。
本記事では、ヒンドゥー教の思想、身体観、色彩文化、現代インド社会の変化を踏まえながら、ビンディの本当の意味を文化人類学的に解説する。
ビンディとは何か?基本的な意味
ビンディとは、額の中央に描かれる点状の印のことを指す。
語源はサンスクリット語の「ビンドゥ(点・種子)」であり、宇宙や生命の始点を象徴する概念と結びついている。
単なる化粧ではなく、精神性・宗教性・社会性を併せ持つ “意味を持つ身体表現”として位置づけられてきた。
なぜインドでは「額」に点をつけるのか
額は“第三の目”の位置
ヒンドゥー教の身体観では、額の中央は 思考・意識・魂が集まる場所 とされる。
ここはしばしば「第三の目」とも呼ばれ、精神的覚醒や内省の中心と考えられてきた。
思考を制御し、集中を高める役割
ビンディは、外界への欲望を抑え、内面へ意識を向けるための 視覚的な“錨(アンカー)” としても機能する。
なぜ赤いビンディが多いのか
赤が持つ宗教的意味
赤はインド文化において、
- 生命力
- 繁栄
- 情熱
- 守護
を象徴する色である。
特に血や火と結びつき、生きる力そのものを表す色と認識されてきた。
結婚と赤の関係
既婚女性が赤いビンディをつけるのは、夫の健康と家庭の繁栄を願う 結婚の象徴行為 である。
そのため、伝統社会では、赤いビンディ=既婚という認識が強かった。
ビンディは結婚している女性の印なのか?
伝統的な考え方
伝統的には、
- 既婚女性:赤いビンディ
- 未婚女性:控えめ、または無し
とされることが多かった。
これは、結婚が女性の社会的役割の中心だった時代背景を反映している。
現代インドでの変化
都市部や若年層では、ビンディは ファッション・アイデンティティ表現 として再解釈されている。
既婚・未婚に関係なく、色や形を自由に選ぶ女性も多い。
男性も額に印をつける理由(ビンディとの違い)
男性がつけるのは「ティラカ」
男性が額につける印は、厳密にはビンディではなく ティラカ と呼ばれる。
これは宗派・儀礼・寺院参拝時に用いられ、祝福や信仰心の表明を意味する。
性別による役割の違い
- ビンディ:日常的・装飾的・社会的意味
- ティラカ:儀礼的・宗教的・一時的
同じ「額の印」でも、社会的機能が異なる 点が重要である。
赤以外のビンディの色には意味がある?
色別の代表的な意味
- 赤:生命力・結婚・守護
- 黒:邪視(悪意)除け
- 白:禁欲・精神性
- 金・装飾色:祝祭・繁栄・美
特に黒い点は、子どもに付けられることもあり、悪意から守るための印とされる。
ビンディにまつわるマナーと注意点
他人のビンディを軽視しない
ビンディは個人の信仰や価値観を反映する。
「なぜ付けているの?」と揶揄するのは失礼にあたる。
触れたり真似したりする際の配慮
観光客がファッションとして真似ること自体は問題ないが、宗教的文脈を理解せずに扱うと不快感を与える場合がある。
他国文化との比較でわかるビンディの特徴
多くの文化で装身具は美的役割に留まるが、ビンディは 信仰・社会的地位・精神性 を同時に表す点が特異である。
身体そのものが文化の媒体となっている。
まとめ
- ビンディは額に描かれる宗教的・社会的シンボル。
- 赤は生命・結婚・守護を象徴する色。
- 現代では信仰とファッションが融合し多様化している。
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