インドを訪れた旅行者が必ず驚くのが、飲み物の文化の豊かさ です。
- チャイ(スパイス入りミルクティー)
- ラッシー(ヨーグルト飲料)
- タンドゥーイ/タンダーイ(スパイス飲料)
- ニンブー・パニ(レモネード)
- 伝統薬草飲料(アーユルヴェーダ)
これらは単なる嗜好品ではなく、気候・宗教・健康観・生活文化 に深く根ざしています。
この記事では、インドの飲み物文化がなぜ独自に発達したのかを徹底解説します。
インドの飲み物文化が発達した“歴史的背景”
① 高温多湿の気候が“飲む薬”を必要とした
インドは暑さと湿気が厳しく、脱水症状を起こしやすい地域です。
そのため古代から、
- 体温を下げる
- 消化を助ける
- 食中毒を防ぐ
- 水の汚染を避ける
といった 健康効果×実用性 を兼ね備えた飲み物が重視されました。
チャイの“煮出す文化”も、水を安全に飲むための知恵 から生まれたものです。
② アーユルヴェーダ(伝統医療)が日常飲料を“薬”にした
アーユルヴェーダでは、飲み物も治療の一部。
胃腸機能、体質、気温に応じて スパイス・乳製品・薬草を調合する文化 が発達しました。
チャイ、ラッシー、ハーブ飲料が “健康を整えるための日常食” になったのは、このためです。
チャイ文化がインド全土に広がった理由
① スパイスの薬効を“飲む形”で取り入れやすかった
チャイには、ジンジャー、カードモム、クローブ、シナモン、ブラックティーが入ります。
これらは全て
- 消化促進
- 抗菌
- 身体を温める
- 食中毒予防
の効能があり、医療と飲料の中間の存在 として発達しました。
② 英国植民地時代に“紅茶文化”が全国へ普及した
イギリスがインドを紅茶大国にし、鉄道の普及と共に「チャイワーラー」(車内販売)が誕生。
インド全土で飲まれる国民飲料へ進化しました。
ラッシー文化が強く根づいた理由
① ヨーグルトが“胃腸を守る薬”だったため
ラッシーの主成分であるヨーグルトには、善玉菌が多く含まれ、食中毒のリスクが減るため、
高温地域に最適な飲料でした。
- 消化を助ける
- 体を冷やす
- 栄養補給になる
という健康効果もあり、北インドを中心に深く浸透 しています。
② 甘味・塩味・スパイス味に分化したことで“万能飲料”になった
ラッシーは地域によって味がまったく違います
- 甘いラッシー:デザート飲料
- 塩ラッシー:消化促進
- スパイスラッシー:薬用
宗教儀礼にも使われ、“乳文化×健康文化” の象徴となりました。
タンドゥーイ(タンダーイ)が生まれた背景
① 春の祭りホーリーと深く結びついた“儀礼飲料”
タンダーイはミルクにスパイスとナッツを混ぜた濃厚飲料。
ホーリー祭で飲まれ、「活力」「再生」「祝福」 を象徴します。
② 薬草・スパイスを“栄養ドリンク化”した伝統
カルダモン、アーモンド、フェンネルなど、アーユルヴェーダ素材が豊富で、滋養強壮ドリンク として長く愛されています。
その他の飲み物が発展した理由
① ニンブー・パニ(レモネード)は“熱中症対策”だった
高温の屋外労働者を中心に愛され、
- 塩分補給
- クエン酸補給
- 水分補給
を同時に行える“天然スポーツドリンク”のような役割。
② カシュミールの“ノンアル飲料文化”の影響
イスラム文化地域が多いため、アルコールより健康飲料が発達 しました。
他国との比較でわかるインド飲料の特徴
① 日本・中国より“薬用性”が強い飲料文化
中国=薬膳
日本=お茶文化
インド=飲むスパイス文化(医療色が最強)
インドは料理以上に飲料の薬用性が強調されます。
② 宗教・気候が日常飲料を大きく変えた珍しい国
- 宗教→アルコールを抑制
- 気候→脱水予防が必須
- アーユルヴェーダ→飲む薬文化
この三つが“インドらしさ”を作っています。
まとめ
- インドの飲料文化は“気候×宗教×医療”の複合で形成
- チャイは英国の影響+薬効性で全国に普及
- ラッシーは健康と儀式をつなぐ飲料
- タンダーイはホーリーと結びつく祝祭飲料
- インドは世界でも珍しい“飲む医療文化”の国

